VOL.8 中井 亮一さん

VOL.8 中井 亮一さん

2020年度山口県芸術文化振興奨励賞を受賞された中井亮一さんにインタビューしました。
音楽への思いや山口県での思い出等、さまざまなことをお話いただきました!

画像:中井 亮一近影

- 中井亮一さんのプロフィール -

山口県出身。日本オペラの先駆者・藤原義江氏が創設した藤原歌劇団に入団し、歌劇の主役を務める。また、山口県総合芸術文化祭や、2018年開催の「明治150年記念式典」でその歌声を披露し、若手実力派テノール歌手の一人として活躍している。

山口県芸術文化振興奨励賞を受賞して

Q:受賞の感想をお聞かせください。
A:身に余る大きな立派な賞をいただきまして、最初は驚きでしたけれども、授賞式を終えてじわじわと実感が湧いてきたと同時に、喜びももちろん大きいですし、身の引き締まる思いです。

音楽への思い、イタリア留学について

Q:声楽を始められたきっかけは何でしょうか。
A:子供の頃から両親が音楽の先生だったので、音楽には慣れ親しんでいて、中高は吹奏楽部でトランペット、大学は音楽教育科で教員を目指すコースに入って、その必修授業でピアノと歌があったんですけど、そこで初めて歌いました。そのときの先生から「声が良いからやらないか」と勧められて転向したんです。先生自身もテノールで、非常に人間味のあふれる先生だったので。「お前は歌をやるんだよ」と半ば強引にですね、本当に受身で、その先生の強引な勧誘がなかったらやってなかったと思います。
Q:尊敬するオペラ歌手はいらっしゃいますか。
A:今日も知事から直接名前が出て大変光栄だったんですけど、日本のオペラの創始者の藤原義江(※1)さんですね。山口県出身で彼自身も私と同じくミラノに留学されて非常に苦労されながらでも、イタリアでは本物の文化を吸収されて日本に持ち込まれて、それを発展させていったっていうことに関して、すごく尊敬申し上げるし、自分も同じ山口県ということで非常に崇拝しております。
※1 藤原義江:山口県出身、オペラ歌手、声楽家、藤原歌劇団の創設者。
Q:ミラノに行かれたのはいつ頃でしょうか。また躊躇はありませんでしたか。
A:2005年から2008年まで行きました。もう大学院も出てプロ活動をしていました。5年間ぐらいかな。中学校の教員も実は1年やってて。でも、やっぱりもっと勉強したいというか、このままじゃっていうところがありまして、29歳の時に行ったので遅かったんじゃないかと自分で思っています。それに留学って、それまでの収入とか全部断ち切っていくので、非常にリスクもあったし迷ったんですけど、妻や自分の両親をはじめ周りの支援があり、励ましもあったもんですから、甘えさせてもらって行ったのがきっかけですね。あとは自分がどうしても行きたかったからですね。成長しなければという思いで何年も悩んでいたので。
Q:イタリアで一番印象的だったのはどこですか。
A:ミラノのスカラ座(※2)っていう劇場がありまして、イタリアオペラの総本山。高校野球の甲子園みたいなものですね。世界中に大きな劇場があるんですけど、一番歴史と権威がある劇場で勉強させてもらったので、もちろん客席からも何遍も見ましたけど、そのステージに立てたっていうのは非常に大きい経験です。今でも舞台からの景色っていうのは出た人しか見られない映像なので励みになってます。
※2 スカラ座:イタリアのミラノにある国立歌劇場。
Q:デジタル化が急速に進む社会の中で、古典であるオペラが私達に伝えようとしていることは何でしょうか。
A:よくミュージカルとオペラってどう違うのかと質問されて、答えられないときもあったんですけど、ここ最近は自分の中でも整理ができてきて、やっぱり電気ができる前の文化か電気ができた後の文化、その差は大きいだろうと。ミュージカルは電気ができた後なので、マイクを通して音を拡声させて伝える。それから照明とかも含めてセッティングとか。オペラや歌舞伎っていうのはそれができる前の文化なので、人間の生の声だけであるいはスタッフの手作りで照明もろうそくだったでしょうから、やっぱりいい意味で古典っていうのは、人間の生の声だから伝えられる感動であったり、音の響きであったり、やる側も聞く側も、アナログの時間、空間っていうのは大切にしていきたいなと思います。

山口県との関わりについて

Q:中井さんにとって平生町、山口県とはどのような場所ですか。
A:平生町は、海と山、風光明媚で自然に囲まれていて、島もありますし、瀬戸内海の波がない凪の海の情景を山から見たりするときに、本当にイタリアのことも思い出しますし、自分の心のふるさとはやっぱりここだなと。機会があれば演奏会なども自発的にやっていきたいなと思っています。出身は平生町なんですけれども、本当におぎゃーって生まれて4歳までは周防大島にいたんですよ。だからあの辺一帯、吹奏楽時代も含めて、そこで培った感性みたいなことが今、東京、名古屋、全国各地で披露できてるっていうのはすごく感じます。

若手アーティストに向けて

Q:若手アーティストに一言アドバイスや応援メッセージをお願いします。
A:NHK合唱コンクール、全国的にも盛んですけど審査員をもう10年以上やっています。私自身は合唱団所属の経験はないんですけど、そういうところで毎年小中高、特に若い世代の演奏に触れています。山口県でも総合文化祭のときには子供たちと共演させていただきました。さっきの話につながるかもしれないけど、生で舞台に上がって、舞台からお客さんに音楽を伝えるっていうことは、それこそネット配信とは違う価値観があります。それから準備ですね。お客様は本番しか見ないんですけど、そこに至る過程、練習の仕方、どういうイメージで普段練習しているか、大きい会場をイメージして演奏しているのか、ネットのカメラに向かって演奏するのとは、全然違う。だからステージからの景色をぜひ大事にしてほしい。経験した上級生たちは忘れずに。それから1年生たちには少しでも早く舞台に上がれるように、舞台へのステージへの憧れや感謝を大事するといいんじゃないかなと思います。


藤原歌劇団公演 歌劇「セビリャの理髪師」アルマヴィーヴァ伯爵役(2017年)
(C)公益財団法人日本オペラ振興会

(インタビューに際しては、新型コロナウイルス感染症対策を行い、実施しました。)

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