VOL.7 名取 裕子さん

VOL.7 名取 裕子さん

令和元年11月にシンフォニア岩国で開催された、「名取裕子朗読『銀河鉄道の夜』から作/宮沢賢治」の公演に併せて、名取裕子さんにインタビューを行いました。賢治、演技、山口県についてなど、多角的にお話いただきました。

画像:名取 裕子近影

- 名取裕子さんのプロフィール -

大学1年生の時、「カネボウ・サラダガールコンテスト」で準優勝、1977年、TBS朝のTV小説「おゆき」で主演デビュー。以来、テレビ「金八先生」「けものみち」「京都地検の女」「カクホの女」シリーズ、「法医学教室の事件ファイル」シリーズ、映画「序の舞」「吉原炎上」「KOYA」「マークスの山」など数多くの作品に出演。ドラマ、映画、舞台、バラエティ、ラジオのパーソナリティーなど、幅広い分野で活躍。

宮沢賢治(※1)について

Q:宮沢賢治の作品の中で朗読してみたい作品はありますか。
A:そうですね。今まで『セロ弾きのゴーシュ』(※2)とかこの『銀河鉄道の夜』(※2)などを、公演させていただいています。音楽と合わせると、とても繊細な少年の心が甦るような、ちょっと自分の心がピュアになるような作品が多いので、『風の又三郎』(※2)などが、次にやりたいな、なんて思っている作品ですね。
Q:賢治の考え方や精神をどのように感じますか。
A:宮沢賢治に関するドラマで、賢治が同級生の青年に恋をしてその男の子を好きになることに罪悪感を持っていたり、家族の構成であったり、病気の妹のことであったりが扱われていました。それらのいろんなことの中で、その地域風土の中で、恵まれた家庭に生まれたけれども、「みんなのためにどういう風に自分はできるんだろうか」と考えたり、それでいながら「神様の教えに背くように、男の子を好きになってしまった」というような思いもあったりして、とても複雑でピュアな心が垣間見えて。そういう中で、ちょっとでも人の役に立つ良い生き方をしなきゃと一生懸命思っている、もがいている青年の気持ちが垣間見えて。人には、いくつになってもそういったものはあるんだろうな、と思います。
Q:賢治の作品の中にあるピュアさに惹かれるのでしょうか。
A:ピュアさだけではないですね。その葛藤ですよね。自分の中に持っている、神の教えに沿いたいけれども背いてしまっている罪悪感だったり、いろんなものがないまぜになっている。そのカオスの中から出てくる「一滴(ひとしずく)のピュア」みたいな。簡単に出来ることではないんだけれども、みんながそうありたいと思う心を、作品の中に沈めている、このような作品を残せているところが素晴らしいのだろうなと思います。残すための苦しみとか、痛みとか、そういうものはとても深かったんだろうなって。表面に隠れた痛みとか苦みとかが、そこが好きです。
  • ※1宮沢賢治:岩手県出身で、農民生活、仏教信仰に根差した詩人・童話作家。
  • ※2『セロ弾きのゴーシュ』、『銀河鉄道の夜』、『風の又三郎』:宮沢賢治の作品。この度、音楽と映像と、名取氏による『銀河鉄道の夜』の語りが融合した朗読公演をシンフォニア岩国で開催。

演技について

Q:声の演技を行う際に気を付けていること・工夫することはありますか。
A:この作品は、もともと朗読のために書かれたものではないのでとても難しいです。目で読むための物語ですから、それを読んで聞いてもらうためには、やはりちょっと声色を使ったり、語りかけたりするような手法を入れないと伝わらない。もともと朗読のために書かれたものならこういうことはなくても成り立つと思うのですが、目で追って読むために書かれたものを声にして読むというのは、そこがとても難しいし、声色で演じ分けるということが必要になってきますね。ただ、朗読だけではなく、見せたいところもあります。絵と音楽と。目と耳と感性と、全部を使って聞いていただきたいので、銀河のような衣装にしてみたり、来たお客さんに少しでも楽しんでいただけるようにと思って、少しずつ工夫をしています。

若手アーティストに向けて

Q:若手アーティストへメッセージをお願いします。
A:若い人は、若いというだけで才能ですから、やりたいことをやってほしいですね。人から言われてやるものでもないですので。どこにいても、何をしても。本当に自分次第です。自分を信じてあげるのは、まず自分だから。これからの世代の方は、いろんな発信の仕方もあるし、様々な才能を伸びやかに育てる方法もあるでしょうから、頑張って欲しいですね。

山口県の印象

Q:最後に山口県の印象をお願いします。
A:とても海も山も気候も温暖で、すごく美しいところです。来る途中も綺麗な海と山と。本当に素敵なところで。今は日本中が、世界中が、災害などいつ何が起きるか分からないような状況にありますので、どうぞこの美しい街と里山を大事に守ってください。美しい岩国、それから以前にも行ったことがありますが明日伺う予定の萩(※3)、本当にどこもきれいなところなので、ゆっくり見たいなと思っています。人ものどかで、今日さっき公演にいらした方も、20何年前にこちらの橋の川原で知り合ったおじちゃんとおばちゃんで。全然女優って知らない中で仲良くなった方です。良い方がいっぱいいて。地域の方とずっと繋がれる、山口県はそのような地ですね。
  • ※3明日伺う予定の萩:インタビューの翌日、山口県立萩美術館・浦上記念館にて萩焼作家・三輪龍氣生氏とのトークショーが開催された。

シェアする

ページの最初に戻る