VOL.10島田 幸典さん

VOL.10島田 幸典さん

2021年度山口県芸術文化振興奨励賞を受賞された島田幸典さんにインタビューしました。 歌への思いや山口県での思い出等、さまざまなことをお話いただきました!

画像:島田 幸典近影

―島田幸典さんのプロフィール―

山口県出身。高校在学中に牙短歌会に入会し、石田比呂志に師事。2016年には「第43回日本歌人クラブ賞」を受賞。歌集が歌壇で高い評価を得るとともに、歌誌「八雁(やかり)」を阿木津英氏とともに創刊し選者を務めるなど、選歌・選評の面でも活躍している。

山口県芸術文化振興奨励賞を受賞して

Q:受賞の感想をお聞かせください。
A:故郷から励ましを頂き、嬉しく思いました。大学以来京都で暮らしていますが、私の出発点、原点は山口だと思っていますので、特別な重みがあります。これまでの受賞者の方を見ても、山口と深いつながりを持つとともに、広く発信してきた人ばかりなので驚くとともに光栄です。

作品について

Q:芸術への考えや、作品づくりにおいて大切にされていることは何でしょうか。
A:日常を、身の回りを丁寧に、細やかに見ること、そこからふっと心に訴えてきたもの、面白いと感じたもの、考えさせられるものを、どんな時でも見逃さず、その場で掬(すく)いとる、具体に即して摑(つか)む、それを日々続けるということだと思います。ささやかに見えるものでも、生き方や社会のあり方、時間とは、存在するというのはどういうことか等々について考えさせられるものがある、この世の見え方を新しくする何かがあるかもしれないと思っています。そしてそれを古い言葉、文語も含め、日本語の響きやリズムを活かして表現する、五七五七七の定型詩、歌として表すということが大切だと考えています。
歌誌「八雁」と歌集『no news』『駅程』
色紙「雨やみし盆地に降れるひかりあり街は瀬戸物のごときあかるさ」(『駅程』)

山口県(ふるさと)の印象

Q:山口県(ふるさと)について、どのような印象や思いがありますか。
A:根っこです。私の記憶、夢のなかで見るものも含め、それは山口の風景です。だから、実際の生活の場が京都だとしても、いつまでも、どこに行っても、自分の心の深いところで故郷はついて回ります。『駅程』に<旅さきにふるさとむしろ近くあり晴れたる駅の鉄銹(てっしゅう)のいろ>という歌があります。これは外国に滞在していたときに作ったものですが、旅先の駅で列車を待っていると、通学で使っていた(旧)小郡駅のことが自然に浮かび、目の前の風景に重なりました。

今後の目標・抱負

Q:今後の目標・抱負をお聞かせください。
A:短歌の世界でも若い世代は口語で歌を作るのが自然なことになっていますが、私は文語に基づく歌を作りつづけたいと思っています。それは、私に歌の、あるいは文学そのものの面白さを教えてくれた古典、また近代の詩歌と同じ言葉で表現したいと思っているからです。現代の詩歌の生きた言葉として、つまり現代人の感情や認識を生き生きと伝える言葉として文語を使いたいと考えています。そして、私の作品が、短歌の未知の読み手や作り手にとって、同じ言葉で作られてきた古代以来の短歌の世界と繫がる扉の一つになればと思っています。

若手アーティストに向けて

Q:若手アーティストに一言アドバイスや応援メッセージをお願いします。
A:若手といっても、同じ時代に作品をつくり、発表しているわけですから、おたがい良いものを作りましょうというのが第一です。もう一つは息長くやっていきましょうということ。長く作っていると、若いときに分からなかったことが後で分かる、以前関心をもって覗いてみたものに再会するということがあり、それも作ることの面白さだと思っています。

シェアする

ページの最初に戻る