VOL.6 末永 史尚さん

VOL.6 末永 史尚さん

2019年度山口県芸術文化振興奨励賞を受賞された末永史尚さんにインタビューしました。
作品制作や山口県での思い出等、さまざまなことをお話いただきました!

画像:末永 史尚近影

- 末永史尚さんのプロフィール -

山口県生まれ。東京都を拠点に創作活動を展開し、美術関係者より高い評価を得る。平成30年には東京都現代美術館に作品が収蔵される。地元山口県においても、創作発表や病院におけるワークショップの実施など、文化芸術の普及啓発を行っている。

山口県芸術文化振興奨励賞を受賞して

Q:受賞の感想をお聞かせください。
A:今回、とても栄誉のある賞をいただいて、大変うれしく思っています。また、主に東京や名古屋などで発表する機会が多く、山口には年に数回しか帰れないのですが、そんな自分に山口でも活動する機会を与えてくださる方々のお陰だと思います。そうした方々にも感謝したいです。

芸術への考え、作品制作について

Q:どうして芸術の道に進もうと思ったのでしょうか。
A:本格的にやろうと決心したのは、芸術を通じて時間を越えたコミュニケーションができることに興味を持ったからです。例えば、私と他の人が会話するというのは一つのコミュニケーションの形で、それはそれでもちろん重要なことなんですけれど、何か絵に表現することや、詩や小説など形式のあるものを通してコミュニケーションするとなった場合、その場に居合わせた人以外の人にもアプローチできるんですね。昔の人が描いた絵も、その人が意図した対象に私は入っていなかったかもしれない。でも、巡り巡って美術館等で私がその絵と出会うことで、時間を越えたコミュニケーションが成り立っているわけです。そういった、人の生のスパンを越えた何かを残すことにすごく面白さを感じたので、この道に進みました。
Q:尊敬している人や意識している人はいらっしゃいますか。
A:山口県立美術館でいろんな展覧会を見た中で、興味を持った作家にパウル・クレー(※1)がいます。自分が山口で絵を勉強し始めた10代の頃に、ちょうどクレーの大きな回顧展が開かれていて、そこで、謎めいた作品というか、じっくり見ても納得できなくて考え込んでしまうような作品に、生まれて初めて出会ったのが、大きな出来事でした。
  • ※1 パウル・クレー:スイス出身、ドイツ人の画家、美術評論家。


山口県立美術館 https://www.yma-web.jp/

Q:これまでどのような思いを込めて作品を作ってこられたのでしょうか
A:私が主に関わっている分野は絵画ですが、絵画というのは、非常に長い歴史があります。その歴史のある絵画という媒体に対して、自分が生まれ育った環境や、その中で得た感覚を、どう組み合わせていくか、どう導入していくかということを考えながら制作しています。
Q:これからどのような作品に取り組みたいですか。
A:自分も40歳を越えて、今でこそ、中堅のような扱いを受けるんですけれど、昔の芸術家の人生を振り返って見ると、40歳くらいがスタート地点なんです。私が興味のある作家はそういう人が多くて。自分も今まで発表の機会をいただいてきたんですが、それは学習のための期間だったのかなという思いもありまして、これからは新しい作品を作るために今まで学んできたことをどう活かしていくか真剣に向き合わなければいけない時期なのかなという認識でいます。

山口県との関わりについて

Q:山口市のご出身だとお伺いしましたが、思い出の場所はありますか。
A:思い出の場所としてはいろいろあるんですけれど、これまで多くの作品を見ていろんなことを勉強してきたので、やっぱり山口県立美術館が自分にとって大事な思い出の場所ですね。山口で一年間だけ大学受験のため浪人をしていたのですが、その時に、山口県立美術館の常設展だと結構安く観覧できるので、美術館の近くで勉強していて、ふっと見たいなという時に常設展を見ていました。その時の経験が自分の中に残っています。
Q:末永さんにとって山口県とはどのような場所ですか。
A:そうですね。食べ物が美味しいといったことなど、山口についていろいろ思うことはあるんですけれど、やはり文化的にも恵まれた地域だったんだなと感じています。特に、展覧会や旅行でいろんな県に行く際、山口って文化的な場所だったんだなと改めて思います。山口で培われた感覚が自分の物差しにみたいになっているかもしれないですね。

若手アーティストに向けて

Q:若手アーティストに一言アドバイスや応援メッセージをお願いします。
A:若いアーティストというと、学生のことを考えてしまうんですが、20代の学生と自分は
20歳くらい年齢が離れている訳です。そうした世代の差を含めて、彼らには彼らの経験
してきたもの、彼らならではの感覚など、自分とは異なっているはずなので、彼らにしか
表現できない何かを、作品として見せてもらえたらすごく楽しいなと思います。

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