2023年度山口県芸術文化振興奨励賞を受賞された木下龍也さんにインタビューしました。作品制作の原動力や郷土への思いについてお話を伺いました。
木下龍也さんのプロフィール
山口県周南市出身。2011年に作歌開始。2013年、第一歌集『つむじ風、ここにあります』(書肆侃侃房)を皮切りに、歌集、教本を出版。依頼者からのお題を受けて創作した短歌を収録した『あなたのための短歌集』(ナナロク社)は好評を博し、短歌界では異例ともいえる増刷を重ねている。2012年第41回全国短歌大会大会賞受賞。希望する学校・図書館に歌集を寄贈したり、短歌教室を開催したりするなど、普及活動にも意欲的に取り組んでいる。
受賞について
- Q:山口県芸術文化振興奨励賞を受賞されてのご感想をお聞かせください。
- A:嬉しい気持ちが半分、僕でいいのだろうかという気持ちが半分、というのが正直な感想です。授与してくださった山口県のみなさまを後悔させないような今後にしなければ、と身の引き締まる思いです。
創作活動について
- Q:木下さんにとって、短歌の魅力とは何ですか?
- A:僕が読者として感じる魅力は、一首について数秒で読めるにもかかわらず読む前と読んだ後の世界が変わるところ、数秒前まで見つからなかった人生のお守りが見つかったりすることです。作者として感じる魅力は、三十一音という制約があるからこそ、他の表現方法では辿り着けなかったであろう感情や風景に出会えたり、再会できたりすることです。
- Q:短歌を制作する際は、どのようなことを心がけていらっしゃいますか?
- A:短歌はたった一行、たった三十一音なので、一音一音にこだわることができます。言葉の選択、順序、省略についてなるべくいじわるな視点で自作を検証しながら、まずは自分自身を納得させるため徹底的に推敲するようにしています。
山口県について
- Q:御自身の創作活動の中で、山口県とのつながりを感じることはありますか?
- A:少年時代を思い出しながら短歌をつくるとき、僕の頭に浮かぶのはどれもが山口県の風景です。あの頃の光や暗がり、喜びや悲しみ、手触り、声、匂い。そういうものを振り返りながら短歌として保存しています。また、2022年には実家からも近いSerenDip明屋書店ゆめタウン徳山店さんが木下龍也短歌展を開催してくださり、たくさんの方にご覧いただけたようです。コロナの影響で帰れませんでしたが、地元からの応援は本当に嬉しく、励みになりました。
未来について
- Q:今後の目標や抱負を教えてください。
- A:中学校、高校、大学で短歌教室を開催させていただいたので、今後は小学校(できれば地元の山口県)での開催を計画しています。同時に歌集の寄贈などを通して、子どもたちの身近に短歌や歌集があるという環境づくりをしていきたいです。また、2023年夏に『荻窪メリーゴーランド』という鈴木晴香さんとの共著歌集が出版されました。過去の歌集を含め、お読みいただければ幸いです。
- Q:最後に、山口県の若いアーティストに向けてアドバイスや応援のメッセージをお願いします。
- A:僕自身、短歌に没頭するあまり、食事や運動や人間関係をないがしろにしていた時期がありました。ですが、土台となる生活がしっかりしていないと、創作は長く続けられません。ですから、まずは創作よりも、ご自身の心や身体を大事にすることを優先してください。ご自身を大事にすることはきっと周りの人々を大事にすることにもつながります。創作はそれからでも遅くありません。